経営分析の基本

【経営総合力】

  1. 総資本経常利益率(%)

    • 経常利益÷総資本
    • 企業活動を総合的に判断するための経営指標。企業が調達したすべての資本(総資産)がどれだけの利益を獲得したかをあらわす。前期との比較を行い、「少ない資本でより大きな利益」という努力目標になる。
      総資本経常利益率は、「総資本経常利益率=総資本回転率×売上高経常利益率」に分解される。これをを高めるためには、総資本を圧縮する(総資本回転率の向上)方法か、売上高経常利益率を高める方法がある。

  2. 売上高経常利益率(%)

    • 経常利益÷売上高
    • 売上高の獲得により、どれだけの経常利益が獲得できたかを示す指標。経常利益は、企業が活動していくうえで、経常的に発生する収益と費用、損失との差額によって計算され、営業活動と財務活動双方の成果をあらわす。
      売上高経常利益率は企業本来の収益力を判断するうえで、最も適した比率。売上高総利益率の変化がないのに売上高経常利益率が下がっている場合は、固定費の増加が考えられる。売上高総利益率があまり変動しない会社では、無駄な固定費を削減できなければ売上高経常利益率を上げることができない。

  3. 総資本回転率(回)

    • 売上高÷総資本
    • 企業に投下された総資本(総資産)によって、どれだけの売上高が獲得されたかを示す。この指標が高いほど、投下資本が有効に(効率よく)活用されていることを示す。
      総資本回転率を高めるためには、資産を取得する際、それが売上獲得に有効であるかどうかを常に意識する必要がある。回転率を上げるには売上高を増やすか、あるいは総資本を減らすことが必要。総資本を減らすには、過大な在庫や活用していない固定資産を処分することで借入金を返済する必要がある。

 

【成長性】

  1. 売上高伸び率

    • 当該期÷前期  --->   企業の成長の証

  2. 売上総利益伸び率

    • 当該期÷前期  --->   商品力の成長

  3. 営業利益伸び率

    • 当該期÷前期

  4. 経常利益伸び率

    • 当該期÷前期  --->   経常利益は金利を支払った後の利益。
    •            --->   企業の収益状況を把握する基本的な比率。

  5. 当期純利益伸び率

    • 当該期÷前期

  6. 自己資本伸び率

    • 当該期÷前期  --->   利益が留保されれば、自己資本は充実する。
    •            --->  自己資本は企業の財務の源。信用度を測る指針になる。

 

【収益性】

  1. 売上高売上総利益率(%)

    • 売上総利益÷売上高
    • 売上高の獲得により、どれだけの売上総利益(粗利)が獲得できたかを示す指標。売上総利益率が高いほど、取り扱っている商品力や販売力が優れているということであり、事業の仕組み(ビジネスモデル)がこの指標に直接影響を与える。一般的には、なるべく高い売上総利益率を目指す必要がある。同業他社との比較、前期との比較が有効。

  2. 売上高営業利益率(%)

    • 営業利益÷売上高
    • 売上高の獲得により、どれだけの営業利益が獲得できたかを示す指標。営業利益は、粗利益から販売費・一般管理費を引いたもので、会社本来の営業活動で稼いだ利益。なるべく少ない販売費及び一般管理費で、なるべく多い売上高を獲得できるように、この指標を高くする努力が必要。

  3. 売上高当期利益率(%)

    • 当期利益÷売上高
    • 売上高の獲得により、どれだけの当期利益が獲得できたかを示す指標。当期利益は、経常利益から特別損益、法人税などを差し引いて計算される最終的な利益であり、株主に分配可能な利益。この意味で株主にとってこの指標は最も重要。

 

【流動性(安全性)】

  1. 自己資本比率(%)

    • 自己資本÷総資本
    • 企業の資産取得に要する資金は自己資本と他人資本(負債)によって調達されている。このうちの自己資本は、返済する必要のない資金。この意味で、自己資本比率が高いほど、売上高が減ったり、売掛金の回収が少々遅くなっても資金繰りに余裕がある。当然、支払利息の負担も少ないので収益力がある。自己資本比率が高い会社は信用度が高いので、設備投資のときなど融資を受けやすい。自己資本比率は60%前後が理想といわれているが、日本の平均値は30%前後。

  2. 流動比率(%)

    • 流動資産÷流動負債
    • 流動資産は1年以内に現金化する資産、流動負債は1年以内に返済すべき負債。この比率は、1年以内に返済すべき負債が1年以内に現金化する資産で返済できるかどうかという、企業の短期的な支払能力を見る指標。流動比率が100%を超えていない場合、短期的な支払能力がないことになり、危険な状態。理想は200%を越えていることだが、日本の情報企業の平均は130%前後。

  3. 当座比率(%)

    • 当座資産÷流動負債
    • 当座資産は現金預金・受取手形などの当座資産に売掛金などすぐに現金化できる貸し付けを加え、流動資産の中でもすぐに現金化できる資産のみで流動負債を払いきれるかどうかを示す。これにより、流動比率よりもさらに厳しく短期の支払い能力を見ることができる。

  4. 固定比率(%)

    • 固定資産÷自己資本
    • 建物や機械などの固定資産に投入した資本は、現金になるまでに長い時間がかかる。できれば固定資産は返済の必要がない自己資本でまかなうのが理想的。固定資産を借入金で取得すると、長期間の有利子負債が増えることからも、自己資本の範囲内であれば安全である。しかし、現実的には日本の全産業の平均で160%前後といわれている。

  5. 固定長期適合率(%)

    • 固定資産÷(自己資本+固定負債)
    • 固定資産が自己資本だけでまかなうのは現実的に難しいところがあるので、しばらく返済する必要のない「固定負債」=長期借入金と自己資本との合計で長期的な支払い能力があるかどうかを見ることができる。固定長期適合率が100%をこえると、固定資産の一部が流動負債によってまかなわれることになるので、危険な状態になる。この場合、長期支払い能力どころか短期支払い能力もなくなる。

 

【資本活用性】

  1. 卸資産回転率(回)

    • 売上高÷棚卸資産
    • 商品などの棚卸資産が売上となって回収されるサイクルで、回転率が大きいほど効率が良いとされる。棚卸資産は一方で運転資金を圧迫する資産でもあり、効率よく資金を回転させるにはこの比率を高めることが大事。

  2. 売掛金回転率(回)

    • 売上高÷売掛金
    • 売上代金の回収速度をあらわす指標で、この比率が高いのは売上代金の回収が早いことを示す。資金繰り上もこの比率を高める努力が大事。

  3. 売上債権回転率(回)

    • 売上高÷売上債権
    • 売掛金や受取手形などの営業債権の回収速度を表す指標で、この比率が高いほど債権の回収が順調にいっていることを示す。資金繰り上もこの比率を高める努力が大事。

 

【生産性】

  1. 一人あたり付加価値(千円/月)

    • (営業利益+人件費+減価償却費)÷従業員数÷12
    • 付加価値とは、企業が新たに創造した価値を金額で表示したもので、生産性を表わす。付加価値率は、売上高のうちこの付加価値がどれだけあるかを示し、製品・サービスの加工度を判定することができる。業種によりかなり差があるので、同業他社や前年度以前の数値との比較が有効。

  2. 一人あたり人件費(千円/月)

    • 人件費÷従業員数÷12
    • 従業員の働き具合や営業の効率をあらわす。単純な指標であるが、わかりやすい目標として同業他社や過年度の数値と比較することが有効。

  3. 労働分配率(%)

    • 人件費÷(売上総利益-販売費)
    • 労働分配率は、人件費の負担度合いを表わす。業界にもよるが、あまり高いのは望ましくない。一般的には50%を超えると人件費負担がかなり重い会社であると言うことができる。

 

【損益計算書の読み方】

損益計算書は、ある決算期にどれだけ利益を上げたかを示す。前の期よりも売上高が増えれば増収、利益が増えれば増益。その逆は減収、減益

利益には複数の種類がある。どの利益に注目するかで、業績動向は大きく異なって見える。

売上高から、原材料費や製造原価などを差し引いたのが売上総利益(粗利益)。原価に比べどれくらい高い値段で商品が売れたかを示すので、商品の魅力や価格競争力の目安になる。

企業のコストには、広告宣伝費や営業社員の給料、事務所賃借料などがある。こうした販売費・一般管理費を売上総利益から差し引いたのが営業利益。本業のもうけに相当する。

収益力をみるには、営業利益を売上高で割った「営業利益率」が役立つ。利益率は同業種内で比べるのが基本。(参考:上場企業全体の平均値は約6%。)

損益に影響するのは本業だけではない。関連会社への投資利益などの収益、また社債や借入金利息などの出費など、こうした財務的な要因も加えた総合的な収益力を表すのが経常利益

営業利益より経常利益が大きければ、財務面で余裕があるといえる。

損益計算書では売上高からスタートし、様々な損益を経て、税金を引き、最後に残るのが当期純利益
その期の特殊事情で発生する特別利益や特別損失も注意してみることが重要。

どの段階でどんな要因でそれぞれの収益が発生したかをみることが重要。また、時系列の比較も大切である。

 

【貸借対照表の読み方】

貸借対照表(バランスシート)は、決算日の会社の財産や借金がどれだけあるかを表す。

貸借対照表の右側が「どうやってお金を調達したか」を示し、「負債」「資本」に分かれる。
負債は借入金や社債など返済する必要があるお金。一方資本は株主からの出資金や貯まった利益など返済不用のお金で「株主資本」とも呼ばれる。

「調達したお金がどのように姿を変えたか」を示すのが左側の「資産」。右側の負債と資本の合計と、左側の資産は一致する。

安全性をみるには、例えば、株主資本を総資産で割って求める「株主資本比率」がある。会社は返済の必要がない株主資本の比率が高い方が安全とされる。

流動比率は、1年以内に現金化できる「流動資産(現預金や棚卸資産など)」が、1年以内に返済しなければならない「流動負債」に対してどれだけあるかを示す。短期の借入金をすべて返せといわれた場合、すぐに処分できる資産が多いほど余裕があるという考え方。100%を下回ると危険といわれる。

逆に土地や工場の機械など、長期間にわたって使うものを「固定資産」といい、すぐに現金化できない。このため固定資産は、すぐには返済を迫られない株主資本でまかなえる方が望ましい。固定資産を株主資本で割って算出したのが「固定比率」で、100%以下が理想である。

債務超過というのは、欠損金が資本の金額を上回った状態のこと。資産もその分縮小して負債の額を下回り、資産を全部売っても負債を返せない。